教育と勉強と成績
以前に書いた中学生の時の英語塾でのこと。(重複する事柄もあるかも)
この辺りでは小学校から中学校へ上がる際、数校の小学校がいっぺんに1つの中学へ集まる。しかしこの英語塾は大変マイナーだったので近所の中学生しか来なかった。従って通ってくる生徒は同じ中学生になっても保育所時代からの仲、初めて顔を合わせたときの事などお互い誰も憶えていないという間柄だった。
この英語塾はかなり変わっていた。
全員集合して、時間になるとまずやるのが「テスト」。小型の黒板が置いてあり、禅寺の住職である先生がそれをおもむろに表を向ける。そこに問題が書いてあり、大半は日本語を英語に訳せという問題だった。答案用紙を回収したのち、採点された前回の答案用紙をもらう。ここまではそう目新しくもない。
しかし、この試験で60点以下を取った場合、「努力不足」という印を押されて返ってくる。さらにその場合
「その日は帰っても夕飯は食べてはならん。」
という(前近代的な)約束があった。
(・・・・・勿論、誰も確認しないし、本人が「食べた」「食べない」を言うわけでもなく、夕飯を取ろうが取るまいが他人は関係ない。まさに本人の自覚の問題である。)
おまけに「塾での成績表」を自分たちで作った。画用紙を1辺15cmの正方形に切って
左に10回までの点数を書き、右に折れ線グラフだったか棒グラフだったかで表示した。そのグラフには60点で赤線を引いた。つまり晩ご飯にありつけたか否かのラインである。
さらに極めつけはこれ
「保護者のコメント欄」まで作ったこと。
「私めの成績はこんなんでござんす」と親に見せ1言書いてもらい、先生に出す。すると次の回に先生がコメントを書いてくれて戻ってくるという、相当ユニークな事をやってくれていた。
さて、中学へ入って英語の授業が始まる、というので保護者は争って塾へ入れる。当然英語以外の教科をやる塾へも通わせる親も多い。
物心ついてから、1学年1クラスで小学校時代を過ごしてきた子供同士なので、「勉強は誰が出来るか?」という事はもう誰もが知っている。英語が新たに加わってゼロからのスタートであってもやはり予想通りなのである。できる奴はできるのである。
で、試験結果を見るわけではなくても、「やっぱりあいつ点数悪そうだな」
そんなことは分かってしまう。
ここまで来てやっと本題。
A君はとてもいい子でよく遊んだ仲だったが、勉強は苦手だった。同じ英語塾に入ってもしばらくすると、「きついんだろうな。」というのは分かっていた。
たまたまその日はA君は塾を休んでいた。すると先生がかしこまって話し出した。
「この間、A君のお母さんから手紙を貰った。みんなもだいたい分かっていると思うが、彼はあまり成績もよくない。だから先生は『塾をやめる』という内容だろうと思ったんだけど、違ってた。
(以下、話の内容から勝手に手紙の文面を推測してみた。)
『いつも息子がお世話になっております。
先生もご存じの通り息子は勉強が苦手で、塾でも他の生徒さんに付いていけていないのは
親としても分かっています。試験の点数も毎回「努力不足」の印が押してあります。
だから息子は塾の日は夕飯を食べません。毎週食べません。
食べればいいじゃない、と言っても食べません。それどころか塾で先生が話してくださった事を、本当に楽しそうに全部話してくれます。
今後息子の成績が飛躍的に上がるとは思えませんが、どうかこれからも宜しくお願いします。』
そういう手紙だったんだ。私としても頭の下がる思いだった。」
この先生の塾の授業は時間の半分以上が雑談だった。今思えば、教えるべき所と教え方を理解しておられたのだろう。そしてその雑談もまた「教育」であったと思う。
A君とそのお母さん、そして塾の先生、3人とも見事だと、中学生ながら思ったものだ。
A君は偏差値から言えばさほど高くない高校へ進学した。僕は随分長い間実家から離れて暮らしていたのでずっと音信不通だった。でも別に人生を誤ったなんて噂は聞いていない。きっと真面目に普通に暮らしていると思う。
今更言う事でもないが、勉強が出来ることだけに価値があり、良い学校、良い会社に入ることだけが唯一の価値観だと思っていると、どこまで行っても満足する事など無くなってしまう。
僕自身の勉強は中学までは割とできる方だった。しかし高校に入ってからはもうズタボロの状況で、三者面談では
「あとは成績だけが良ければ、お前には何も言うことは無いんだがなあ。」
と担任にボヤかれた。(「はぁ」というその時の母親の顔は笑えた)
いじめが原因で自殺する子供が続出する今日この頃。でもそのいじめの原因は馬鹿な親だと僕は思っている。先日「たけしの日本教育白書」という番組を見ていた。そこで取り上げられていた給食費を払わないバカ親については以前この日記でも書いた。しかし幼稚園の劇で「うちの子はどうして主役じゃないの」と訴えるというバカ親には開いた口が塞がらなかった。そういう親の子供がまともに育つとは到底思えない。
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